婚姻費用や養育費算定の基礎となる収入について

2015-11-17

 弁護士の青木です。今回は、婚姻費用や養育費の算定にあたり、最も重要となる当事者の収入の問題についてお話します。

調停や審判等裁判実務においては、婚姻費用や養育費は、義務者(=婚姻費用や養育費を支払う方)と権利者(=婚姻費用や養育費を受け取る方)の収入に応じて金額が算定されます。通常は、源泉徴収票や給与明細書等から判断される実際の収入を算定の基礎とします。しかし、例えば義務者が退職して低収入または無収入になった場合、直ちに退職後の収入を算定の基礎としてよいかが問題になります。

この場合、稼働能力の有無が重要視されます。つまり、義務者の学歴、職歴や資格の有無、年齢、健康状態のほか、退職の経緯等を勘案し、潜在的稼働能力が存在すると判断される場合には、現実の収入ではなく、稼働能力に応じた収入を認定し、算定の基礎とすることになります。

では、稼働能力に応じた収入を具体的にどのように認定するのでしょうか?判例では、①退職前と同程度の収入を稼働能力と認定したり、②平均賃金を稼働能力と認定したり、③平均賃金を考慮しつつ修正した金額を稼働能力と認定したりしています。なお、平均賃金には、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめた賃金センサスが用いられます。賃金センサスには、性別、年齢、学歴ごとに年間収入が統計されているので、義務者の事情をこれにあてはめて収入を認定することになります。

 ここで一つ審判例をご紹介します。別居後に妻が夫(大卒、40代前半)に対して婚姻費用を請求したが、夫は同居中に勤務先を退職し、就職活動を行ったものの、年齢等の理由から採用に至らず、退職後約2年間無職であるという事案です。裁判所は、夫の年収について、「退職後約2年職に就いていないものの、直ちに無収入と評価することはできない」としつつ、「就職活動の状況をみても前職と同様の収入を得ることは困難である」旨評価しました。そのうえで、賃金センサスの産業計・男性・大卒40~44歳の平均賃金を前提とすることはできないが、これを無視することもできないとして、産業計・男性・大卒40~44歳の平均賃金約735万円を参考に、夫の収入を年間500万円とみるのが相当であると認定しました。

 この他、賃金センサスの約半額を認定した事案、男性であっても女性の短時間労働者の賃金センサスを参考に収入認定を行った事案もあります。

 以上、婚姻費用や養育費の算定基礎となる収入をどう認定するか困難な場合がありますので、その際は弁護士に相談されることをお勧めします。

以上

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